えいがかんそう 【ぼくと魔法の言葉たち】
⭐️⭐️⭐️⭐️
自閉症で言葉を失った少年がディズニー映画を通して言葉を取り戻す奇跡の物語…とあるが、この映画を説明するにはもう、原題の「Life,animated」で十分だと思う。
描き出されるオーウェンの人生は「波瀾万丈」とか「奇跡」とかではなく、「アニメのような」がしっくりくると同時に、映画そのものの作りもアニメーションが織り交ぜられていて、不思議な魅力に溢れていた。
ディズニー映画好きには嬉しくなるほどアニメの映像が挟まれ、ドキュメンタリー好きは感動で涙が滲むほど家族や周りの愛情がいっぱいだった。
途中で絵本のようなアニメーションが出てくるのだが、ふとなぜだか「はてしない物語」を思い出した。バスチアンがアウリンを手に旅している場面と似ていたからかもしれない。
オーウェンがぶつかる人生の壁は、誰しもがぶつかり悩むことでもあった。だからこそ彼がどんな選択をしてどのような人生を歩んで行くのかをまるで自分のことのように感じ、惹き込まれてしまったのだろう。
作中でオーウェンが人生を嘆いた時があった。「こんなに辛いことがずっと続くなんて、人生は不公平だ」と。
それに対する母親の言葉がとても心に響いた。「そうよ、人生は不公平よ。でも辛くても向き合い続けていれば、きっといつかは良くなるわ(要約)」。甘い慰めではなく突き放すかのような言葉だが、オーウェンへの深い愛が溢れていた一言だった。彼女だからこそ言えた言葉だった。
機会があれば原作も読んでみたいが、オーウェンや父親のディズニーキャラクターのような表情や声マネは、映像ならではのものだと思う。それぞれの魅力を味わってみたい。
本筋からはずれるが、オーウェンの兄・ウォルトが心配になった。ひとりで何もかも抱え込んでしまいそうなところが見え隠れしていたので、彼も自分の人生を自由に歩んで幸せでいられるよう祈っている。
…てなことを映画館で想いました。おわり。